「いつかは地域に関わる仕事がしてみたい」
「地方で暮らし、自分にできることでまちづくりに貢献したい」
そんな思いを持ちながら、都会に暮らしつつ移住の機会をうかがっている方が
ここ最近増えてきているように思います。
withコロナ時代と言われるようになり、テレワーク・リモートワークが普及する中で
「自分の暮らす、働く場所はここでなくても良いのでは」と思いはじめている。
もっと自然豊かな環境や、人とのつながりに恵まれた場所で
自分らしい働きかた、暮らしかたをつくってみたい。
…そんな方に、今回のおはなしが届くといいなぁと願いつつ、この記事を書いています。
私たちが住んでいるのは、山梨県の東南部、「富士の麓の城下町」と呼ばれている人口約3万人のまち、都留市。豊かな自然環境はもちろんのこと、都留文科大学をはじめ市内に3つ大学があるので、全国各地から集まってきている若者が市内人口の10%を占めている、というちょっと変わったまちでもあります。
そんなここ都留市で、一般社団法人 まちのtoolbox が、地域おこし協力隊として新たにメンバーに加わってくれる方を募集しています。老若男女問わず、あらゆる世代の市民が
ずっと生きがいをもって過ごすことのできる「生涯活躍のまち」の立役者として活動する”コミュニティデザイナー”の働きかたとは、具体的にどんなものなのでしょうか?
\ この人に聞きました /
伊藤洋平(いとう・ようへい)さん(写真左)
一般社団法人まちのtoolbox 代表理事。大学卒業後、東京都多摩市役所職員として多摩ニュータウンの高齢化問題に取り組んだのち、中国へ単身留学。帰国後、高齢者のコミュニティづくりに携わった経験から、2016年4月(株)みんなのまちづくり創業。長野県など全国各地で生涯活躍のまち推進事業に取り組む。2018年より、山梨県都留市の「生涯活躍のまち・つる推進協会」に関わるのをきっかけに、2020年4月に一般社団法人まちのtoolboxを設立、代表理事に就任した。
小川悟(おがわ・さとる)さん(写真右)
一般社団法人まちのtoolbox 仕事創出・人材育成担当 / キャリアコンサルタント。2018年11月 都留市地域おこし協力隊として埼玉県坂戸市より都留に移住。移住前は国内自動車メーカーのディーラーにて営業マンとして活躍する傍ら、キャリア支援にも関心があり、人事・採用部門のサポート活動を行っていた。退職後「移住相談員」として地域おこし協力隊に就任、活動期間中に国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得。現在は一般社団法人まちのtoolboxの人事・キャリア開発担当として幅広い業務に携わっている。
ー初っ端からこんなことを言って申し訳ないのですが、伊藤さんって、代表理事なのに表舞台にあんまり出てこられないですよね(笑)。都留住民たちの間で「つかみどころがない」とか「謎の存在」と言われているのをよく耳にするのですが、そのポジショニングはあえてですか?
伊藤)やっぱり主役はまちの皆さんですから。私は影の存在でいいと思っています(笑)
小川)toolboxは裏方というか、「枠」なんですよね。市民や移住、起業したい人などが主人公なんです。その人たちが快適に幸せに都留市で暮らせるように、我々は新しい環境を提供したりする黒子になればいいと思っています。イベントの運営や司会などで多少前に出るのが必要な時もありますが、やっぱり主役はいまいる市民の方や、つるに移住・起業したいと思ってくれているプレイヤーの方々です。これまで伊藤さんがつくってこられた舞台に、色々な方々が一緒にやりたい、自分も関わりたい、と加わってきて下さっていて。それがtoolboxのいいところなのかな、と感じています。
ーまちのtoolboxさんは、市民の自己実現の舞台を作る立役者、ということなんですね。具体的にはどのような業務を行っているのでしょうか?
伊藤)まちのtoolboxの前身でもある「生涯活躍のまち・つる推進協会」では、①移住促進 ②仕事創出 ③生涯学習 ④健康増進 という4つの柱を立てて事業を開始しました。
まちのtoolboxができる前は地方創生の柱の一つである「生涯活躍のまち」事業の第一期で、60歳前後の定年退職を控えた「アクティブシニア」と呼ばれる層をターゲットに、移住・定住促進のための事業を展開していたんです。それが2020年からの地方創生第二期で、すべての世代に対象が広がりまして。その分、事業軸は選択と集中でやっていこうということで、現在は移住促進と仕事創出を中心に進めています。
ー推進協会時代から4年活動してこられて「生涯活躍のまち」に近づいてきた実感はありますか?
伊藤)変わってきていると思いますよ!実感は正直あまりないですが(笑)、チャレンジできる機会は増えていると感じますね。最近だと、ビジネスプランコンテストの主催や、伝統産業でもある「ほぐし織」を用いた傘づくりのプログラムを地元企業さんと共催するなど、「起業」や「仕事づくり」というところに注力して取り組んでいます。
ー今回新たに募集する地域おこし協力隊は3名で、それぞれ取り組む内容が違うと伺いました。
小川)はい。1人目は、チャレンジする市民のコミュニティをつくりその場を育てていく、コミュニティデザイナーです。「地域の人材育成および都留市で継続的に働き続けられる機会の創出」をミッションに、このコワーキングスペースを主な活動拠点として、スペース運営やイベントの企画、市内外の事業者(法人・個人問わず)との繋がりづくりを担っていただきます。
2人目は、「市内外の人と都留市を繋ぐ継続的なコミュニティづくり」をミッションとする、都留市のプロモーターです。1人目のコミュニティデザイナーと少し似ているように思われがちですが、コミュニティデザイナーは市内のコミュニティを運営していくのに対し、プロモーターは「都留市の営業マン」のようなイメージで、市外に出ていき、東京などの都市部から新たな仕事や人材を獲得してきたり、サテライトオフィスの誘致などにも取り組んでいただく予定です。また、コミュニティデザイナーと協力しながら、市内の仕事の担い手育成を目的とした研修の企画運営を行い、そこに移住検討中の方を呼んでみたりなど、都会と地方のつなぎ役としての役割も担っていただきます。
3人目は、「地域の伝統文化の復興および担い手の育成」をミッションに、伝統織物「郡内織」を使った地域活性化、新たな産業創出の担い手となっていただく方です。自ら講座に参加していただくだけでなく、制作した傘のブランディングや販売、情報発信、傘作り教室の運営など、この伝統織物復興事業に携わっていただきます。
ーどのお仕事も魅力的ですね。応募を検討していらっしゃる方々に期待することなどはありますか?
伊藤) 応募される方には、ご自身の強みを活かしてもらえたらいいな、と思います。一見全然違うことをやっているように見えますが、共通して言えるのは、ルーティン業務のようなものがほぼない、ということですね。受け入れ側となる私たちも、現在進行形で手探りですすめているようなものなので、指示を待つのではなくご自身で「何をやりたいのか」「いつやるべきか」などといったところを自ら考え、主体的かつ前向きに取り組んでいっていただきたいです。はじめから何もかも完璧にこなせる人なんて誰もいないというか、やりながら学んでいく、ということができたらいいなと思っていますし、もちろんメンバーがサポートしていきます。
ー他の地域で、地域おこし協力隊として移住した方の中には、やりたいことがあっても地域の方達の理解を得るために時間がかかってしまったり、サポートが受けられずに不安を感じている方もいるという話もちょくちょく聞きますが、toolboxさんではその心配はなさそうですね。特に、元地域おこし協力隊でもある小川さんと一緒に働ける、というのは安心感があります。
小川)正直な話、地域おこし協力隊の方に初年度からどこまで求めるのかは難しいのですが、まちのtoolboxのスタッフとして対応する方々は、若い世代から高齢者世代までいらっしゃいますし、市内にお住まいの方だけでなく、市外や首都圏の方や地方の方とも話をして仕事をやっていきます。山奥の空き家に行ったりとバリバリにアナログの世界もあれば、デジタルの世界でオンラインを駆使することもあるので多面的なことをやっています。そういったことに対してある程度やってみようという気持ちや、周りの人と協力したり分からないことを聞いてやれるようになれる、地道なことが必要になるのかなと感じますね。
私自身、地域おこし協力隊で活動していた始めの頃からあらゆることが出来ていた訳ではないですし、最初から全てが完璧にできるという方というよりも、伊藤さんがおっしゃったように「やりながら学んでいく」、それこそチャレンジ精神を持った方と、私自身も一緒に挑戦していきたいと思っています。
ー「チャレンジ」という単語がここまでのお話の中でかなり頻繁に出てきているなと感じます。やはりプレイヤーが育つまちの共通要件として「安心してチャレンジできる風土」というのは不可欠なのかもしれませんね。
伊藤)そうですね。私にとって都留は、チャレンジをさせてくれるまちだと思っています。まちづくり法人の代表を私のような外から来た人間に任せるのは、市役所にとっては正直リスクでしかなかったと思います。それでも、そのリスクを取って挑戦させてくれたのがこの都留市でした。
また、私が移住した当時からすでに、市民の方がワイワイとやっておられるのを感じられたのも大きかったですね。もうすでに「やってみよう!」という流れがあったので、それに乗っかったというか。
「地方創生」のお題目で都会からコンサルティング会社が来て、そこにお金が落ちて終わっちゃうような「まちづくり」だったら、そもそもやる意味が薄いのではないかと思います。地域に還元される仕組みや地域で雇用が生まれ、経済が回る仕組みがなくては、本当のまちづくりとは言えないと思います。
そういう意味では、都留は地元で活動している若い世代がいるのが財産だと思っています。市内のプレイヤーたちを主役に、活躍の舞台を整えると同時に、新たに移住してきた人たちがチャレンジできる場も提供したい。
まちのtoolboxも設立3年目で人が増えてきている中で、組織として動いていくことが今後は必要になっていくと思っています。これまでは個人が中心で1人1業務というような体制で動いていましたが、これからはチームでの動きが増えていきそうなので、「組織運営」…マネジメントや、人材育成をしていくことが、私たちにとってもチャレンジですね。
ー今までも、これからも、市民と共にチャレンジし続けるまちづくり。その一端を担う新しい仲間としてどんな方がやってくるのか、すごく楽しみですね!最後に応募を考えている方に、メッセージをお願いします!
小川)都留市はチャレンジする人を応援する土壌が生まれてきましたし、移住者も増えているので移住に対して不安があるかもしれないですが、まちもちょうどよく住みやすいですし、えいや!と思って一歩を踏み出してみてもいいのではないかと思います!
伊藤)ここまでのお話を読んでいただいて、地域おこし協力隊に求められることが多いように感じるかもしれないですが、私としては応募してくださる方がどういったことに強みを持っているかや、どういうことをやりたくないのかというのを見た上で適材適所でお仕事をお願いできたらいいなと思っています。なので、募集に書かれていることができないからという理由にためらうのではなく、やってみたいからという気持ちでご応募いただければと思います!都留市で一緒に活動できることを楽しみにしています。
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「まちのtoolbox」という社名さながら、まちづくりに関わるあらゆることを一手に担って活動するお二人。その守備範囲の広さから、逆に「何をやってるのかわからない、謎の存在」と言われがちなところ(!)に、今回切り込ませていただきました。
お話を伺う中で何度も出てきた「主役は市民のみなさん」という言葉。
いち市民としてとても心強く思うと同時に、市民と一緒になってチャレンジしていこうとする姿勢に、改めて「都留っていいまちだな〜」と手前味噌ながら感じ入りました。
そんな仲間の1人として一緒に働ける機会、とっても貴重で素晴らしい経験になるのではないでしょうか?
少しでも「気になる」「まずは現地で話を聞いてみたいかも」と思われた方は、SMOUTの記事から「直接話を聞いてみたい」で応募してみてください!
もしくはすぐにでも地域おこし協力隊になりたい!と思った方は、下記の要項からご応募をお待ちしています。
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山梨県都留市地域おこし協力隊(コミュニティデザイナー・プロモーター・伝統産業を活用した地域活性化)募集要項
《①コミュニティデザイナー》
https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/detail/52853
《②都留市のプロモーター》
https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/detail/52854
《③伝統織物の傘を活用した産業の担い手》
https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/detail/52852
※ご応募の際は、ご希望の業種の記載をお願いいたします。
(2022.7.26取材)
写真:奈良大輔
一部の写真・資料は、(一社)まちのtoolbox様提供です。